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株式会社会計

株式発行

株式会社を設立するには、株式を発行して株主になりたい人から資本の払込を受ける必要があります。
会社の設立に際し、定款に会社が将来発行する株式の総数ならびに設立に際して発行する株式の総数を記載することになっている。定款に記載した「会社が発行する株式の総数」を授権資本といい、設立に際してその4分の1以上発行しなければならない。そして授権資本から設立の際に発行した株式数を差し引いた残りの株式は、取締役会の決議により必要に応じて発行することになります。
株式には、額面株式と無額面株式とがあり、額面株式は定款に1株の金額(額面金額)が定められ、その株券に金額が記載されている株式のことです。無額面株式は、額面金額の記載がなく株式数だけが記載されている株式です。1株の金額は、商法で¥50,000以上と定められているます。また、資本金は一千万円以上でなければ株式会社の設立は認められないことになっています。
株式を発行したときは、額面株式、無額面株式のどちらでも、原則として、発行価額の総額を資本金勘定の貸方に記入します。

【例】

株式会社第一商店は、授権資本を800株と定め、会社設立に際し授権資本の4分の1を額面株式(1株の額面金額¥50,000、1株の発行価額¥50,000)で発行し、払込金を当座預金とした。

(仕訳)

(借方) 当座預金

10,000,000

(貸方) 資本金

10,000,000

●参考
株式発行価額の総額の計算: ¥50,000×(800株×1/4)=¥10,000,000

【例】

第二物産株式会社は、定款に会社が発行する株式の総数を3,000株、無額面株式の最低発行価額を¥50,000と定め、会社設立に際し無額面株式750株を1株¥50,000で発行し、払込金は、当座預金とした。

(仕訳)

(借方) 当座預金

37,500,000

(貸方) 資本金

37,500,000

●参考
定款に無額面株式の最低発行価額を定め、その金額より高い金額で発行することが必要で、仕訳は額面株式と同じです。
無額面株式の発行総額: ¥50,000×750株=¥37,500,000


株式は原則的に、発行価額の総額を資本金勘定に計上(記入)するが、発行価額の2分の1以内の金額は資本金に組み入れないでおくことができます。額面株式の場合は、額面金額を超える額、無額面株式の場合は、設立時には¥50,000を超える額に限ります。またこの発行価額のうち資本金に組み入れない額は、株式払込剰余金勘定(資本の勘定)の貸方に記入します。

【例】

1. 新額面株式400株(1株の額面金額¥50,000)を、1株¥110,000で発行し、払込金額は当座預金とした。なお、この発行価額の2分の1は資本金に組み入れないことにした。

2. 新株式(無額面株式)500株を1株発行価額¥100,000で発行し、払込金額は当座預金とした。なお、この発行価額のうち1株につき¥50,000は資本金に組み入れないこととした。

(仕訳)

1.(借方) 当座預金

44,000,000

(貸方) 資本金

22,000,000

    払込剰余金

22,000,000

2.     当座預金

50,000,000

     資本金

25,000,000

    払込剰余金

25,000,000

●参考
1. 払込金額の総額:¥110,000×400株=¥44,000,000
  発行価額のうち資本金に組み入れない額の総額:
  (¥110,000×1/2)×400株=¥22,000,000

当座預金

資本金

(1)    44,000,000

(1)   22,000,000

株式払込剰余金

(1)   22,000,000

2. 無額面株式を発行した場合の会計処理は、額面株式と同じです。

払込金額の総額: 
 ¥100,000×500株=¥50,000,000・・・・当座預金勘定の借方に記入
資本金に組み入れる金額の計算: 
 (¥100,000×1/2)×500株=¥25,000,000・・・・資本金勘定の貸方に記入
資本金に組み入れない金額の計算: 
 (¥100,000×1/2)×500株=¥25,000,000・・・・株式払込剰余金勘定の貸方に記入

【問題】    解答例

次の取引の仕訳をしてください。

( 1.)  額面株式(1株の額面金額¥50,000)200株を1株の発行価額¥75,000で発行し,払込金は当座預 金とした。商法の定める最低額を資本金に組み入れる。

(2.) 増資にあたり,無額面株式100株を1株の発行価額¥60,000で発行し、払込金は当座預金とした。この発行価額のうち1株につき¥10,000を資本金に組み入れないこととした。

 

当期純利益または当期純損失の計上(発生)の処理

法人の純利益や純損失の利益処分は、株主総会で決められるから、決算時では、まだ確定していません。よって、決算末日に、翌期へ繰り越す仕訳を行い、来期に入って開催される株主総会の決議に基づき処分の会計処理を行います。
A. 当期純利益・・・・・損益勘定から未処分利益勘定の貸方へ振り替え

未処分利益

損   益

純利益

費用

純利益

収益

B. 前記繰越利益が繰越利益勘定に記入されているときは、ともに未処分利益勘定へ振り替えます。

未処分利益

損   益

当期未処分利益

費用

純利益

収益

繰越利益

未処分利益勘定へ

未処分利益

 

C. 当期純損失・・・・・損益勘定から未処理損失勘定の借方へ振り替え

未処理損失

損   益

純損失

費用

収益

純損失

D. 前記繰越損失が繰越損失勘定に記入されているときは、ともに未処理損失勘定に振り替えます。

未処理損失

損   益

当期未処理損失

費用

収益

純損失

繰越損失

未処理損失

未処理損失勘定へ

当期純利益を計上、繰越損失勘定に残高がある場合は、相殺して、差額は下記のように処理します。
当期純利益>繰越損失・・・・未処分利益勘定に記入
当期純利益<繰越損失・・・・未処理損失勘定に記入

当期純損失を計上、繰越利益勘定に残高がある場合は、相殺して、差額は下記のように処理します。
当期純損失>繰越利益・・・・未処理損失勘定に記入
当期純損失<繰越利益・・・・未処分利益勘定に記入

【例】

1. 当期純利益¥1,800,000を損益勘定から未処分利益勘定に振り替えた。

2. 当期利益¥2,500,000および前記繰越利益¥500,000を、未処分利益勘定に振り替えた。

3. 決算の結果、損益勘定を締め切り、確定した当期純損失¥700,000を未処理損失勘定に振り替えた。

4. 下記の損益勘定は各勘定の締め切り後の記入を示しています。よって、当期純損益を未処分利益勘定に振り替え仕訳を行った。

損   益

仕入   30,000,000

繰越商品 2,500,000

販売費  4,000,000

支払利息  900,000

法人税  1,500,000

売上  38,000,000

繰越商品 2,000,000

5. 決算の結果、当期純利益¥2,400,000を計上した。ただし、繰越損失勘定の残高が¥600,000ある。

(仕訳)

1.(借方) 損益

1,800,000

(貸方) 未処分利益

1,800,000

2.     損益

2,500,000

     未処分利益

3,000,000

      繰越利益

500,000

3.     未処理損失

700,000

     損益

700,000

4.     損益

1,100,000

     未処分利益

1,100,000

5.     損益

2,400,000

     繰越損失

600,000

     未処分利益

1,800,000

●参考
1.  費用および収益の各勘定を損益勘定に振り替えて、各勘定を締め切ります。そして、損益勘定で純損益が把握(計算)されます。

(借方) (貸方)
総費用 総収益+純損失

総費用+純利益

総収益

損益勘定を締め切るには、借方に純利益を記入します。よって借方科目は、損益となり、当期利益は、未処分利益勘定の貸方に振り替え記入する。

2. 

未処分利益

損   益

3,000,000
(2,500,000+500,000)

費用

(純利益)2,500,000

収益

繰越利益

(未処分利益)500,000

500,000

3. 当期純損失が計上・・・・・損益勘定の貸方から未処理損失勘定の借方へ振替記入
                 上記の例(C)参照してください。

4. 純損益の計算
  損益勘定の貸方合計¥40,000,000−借方合計¥38,900,000=¥1,100,000

5. 当期純利益¥2,400,000を計上、しかし、繰越損失勘定の残高が¥600,000ある。よって、未処分利益は、¥1,800,000です。この金額を未処分利益勘定の貸方に記入します。

繰越損失

損   益

600,000

(5)    600,000

費用

(5)純利益 2,400,000

収益

未処分利益

 

(5)   1,800,000

 

当期純利益または当期純損失の処理(利益処分の仕訳)

当期純利益は未処分利益勘定に振り替えて次期に繰り越します。次期に入って株主総会が開催され、総会の決議で処分が確定します。残額がある場合は、繰越利益として翌期に繰り越される。このように会計処理は継続されていきます。

利益処分の主な処分項目について下記を参照してください。

利益準備金・・・・将来の設備の拡張や損失の補填など資金の準備のために、毎期の利益から利益処分の際に積み立てる資本の勘定です。商法規定で資本金の4分の1まで積み立てることになっています。その積立額は、毎期、決算期に金銭による利益配当額の10分の1以上を積み立てることを商法で規定しています。

株主配当金・・・・株主に対する利益の分配となる配当を、その期の負債として計上したものが株主配当金です。

役員賞与金・・・・会社の役員(取締役、監査役など)に対してする利益の分配額を負債として計上したものが役員賞与金です。

任意積立金・・・・利益準備金以外の積立額がこの任意積立金です。各会社の目的や計画に従って自由に積み立てる積立金です。配当平均積立金、設備拡張積立金、欠損金てん補積立金などで、特に目的をもたないで積み立てるのが別途積立金です。

株主総会で利益処分が決定したら、未処分利益勘定の借方と処分科目の各勘定の貸方に記入します。未処分利益の残額は、繰越利益勘定の貸方に振り替え記入して次期に繰り越す方法と未処分利益勘定のままで繰り越す方法とがあります。試験問題での条件や指示事項を見落とさないようにしてください。

【例】

1. 定期株主総会で、当期未処分利益¥8.000,000を、次の利益処分案で承認された。

 利益準備金¥600,000 株主配当金¥6,000,000 別途積立金¥1,200,000
 取締役賞与金¥700,000
 残額は次期に繰り越す。
 (注)取締役賞与金勘定を用いる。

2. 株主総会において、未処分利益¥18,000,000について次のとおり利益処分が決定した。なお、当社の資本金は¥50,000,000であり、すでに¥12,000,000の利益準備金が積み立てられている。また次期繰越利益は未処分利益勘定で繰り越す方法によっている。

 利益準備金           各自計算してください
 別途積立金            ¥6,000,000
 配当金(全額金銭配当)    ¥10,000,000

3. 株主総会において、未処理損失¥1,000,000を次のように処理することを決議した。

 別途積立金¥800,000を取り崩し、残額は次期に繰り越す。
 (注)繰越損失勘定を用いること。

(仕訳)

1.(借方) 未処分利益

8,000,000

(貸方) 利益準備金

600,000

     .株主配当金

6,000,000

     別途積立金

1,200,000

     取締役賞与金

700,000

     繰越利益

500,000

2.     未処分利益

16,500,000

     利益準備金

500,000

     別途積立金

6,000,000

     株主配当金

10,000,000

3.     別途積立金

800,000

     未処理損失

1,000,000

      繰越損失

200,000

●参考

1. 株主総会で利益処分案が承認されたので、未処分利益勘定は消滅します。未処分利益の残額は繰越損益勘定の貸方に振り替え記入して次期に繰り越します。利益処分承認額は、各勘定の貸方に記入します。なお、利益準備金、別途積立金、繰越損益は資本勘定ですが、株主配当金と取締役賞与金は、負債の勘定ですから注意してください。

2. 商法では資本金の4分の1に達するまで、毎期の決算時に金銭配当金の10分の1以上を利益準備金として積立ることが求められています。
資本金¥50,000,000×1/4=¥12,500,000(資本金の1/4の額)
¥12,500,000−¥12,000,000(利益準備金積立額)=¥500,000(要積立額)
本年の配当は¥10,000,000で、10分の1は¥1,000,000です。しかし、要積立額が¥500,000だから¥500,000が積立額となります。

3. 未処理損失勘定は、資本の勘定ですが、借方残高となる勘定です。よって減少(消滅)の場合は、貸方に記入します。別途積立金は資本勘定で、貸方残高となる勘定です。別途積立金を取り崩して減少となれば、借方に記入することになります。また、未処理損失の残額は、繰越損失勘定を用いるよう問題で指示されているので、この勘定の借方に記入して処理します。

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