135、役員所有の土地に会社が借地権を設定する場合
        【問】
        役員所有の土地に会社が借地権を設定する場合について説明してください。
        【答】
        借地権に関する税法の規定は、法人が地主でも、また、借地権者でも実質的に同じです。会社が借地権を設定するにあたって役員に対して権利金を支払うか権利金の支払に代えて相当の地代を支払うときは、その借地権設定にかかる取引は、正常な取引条件で行われたものとして取り扱うことができます。例えば、権利金も相当の地代も支払わず、かつ、土地の無償返還に関する届出書 の提出もないときは、会社が借地権を無償または低い価額で取得したことになるので、会社に借地権の受贈益の認定がおこなわれます。
        今までは、会社所有の土地に他人に借地権を設定させる場合について考えてきました。税法もこのような場合を前提に書かれていますが、同族会社では、会社が役員の土地に対する借地権者になる場合が多いと考えます。個人から法人成りしたような場合は、土地の所有者は、個人で、建物や工場が会社という事例が多々あると考えます。地主である役員が、借地権を会社に設定させて仮に権利金を収受しなくても借地権の無償譲渡についての、 みなし譲渡 の課税は行われません。このことは、所得税法上、借地権設定対価の収入は本来不動産所得の収入金額で、その額が土地の価額の二分の一を超える場合に初めて譲渡所得の収入金額とみなすので、借地権の無償譲渡について みなし譲渡所得 の認定を行えないからです。会社の側に借地権の受贈益が認定されても、役員個人には、課税問題は起こりません。ただし、会社が権利金相当額を役員に支払ったときは、役員の側で不動産所得または譲渡所得の課税が発生します。借地権設定対価の収入金額が土地の価額の二分の一以下のときは役員の側では不動産所得の収入金額となり、その場合、臨時所得の平均課税の適用を受けられることがあります。
         
        136、役員所有の土地を会社が賃借りして、土地の無償返還に関する届出書を提出する場合の税法上の取り扱い
        【問】
        役員所有の土地を会社が賃借りして、土地の無償返還に関する届出書を提出する場合の税法上の取り扱いについて説明してください。
        【答】
        土地の無償返還に関する届出書を、所轄税務署に提出しますと権利金の認定でなく、差額地代の認定が行われます。仮に、会社が役員(社長)所有の土地に権利金を支払わず、そして、相当の地代以下の地代しか支払わないで借地権の設定をした場合、この場合に土地の無償返還に関する届出書を提出しますと、差額地代の認定が行われ、会社は地代と差額地代支払債務免除益が相殺され、法人所得金額の増減に影響がなく、役員(社長)は収受していない地代について所得(不動産所得)の発生は、ないことになります。結果として、役員(社長)は、相当の地代未満の地代を収受しながら、最終的に土地の返還時に役員(社長)は会社に立ち退き料を支払う必要がないことになります。以上のような法解釈が、可能です。問題が残る可能性としては、役員(社長)に対する不動産所得の課税問題だと考えます。しかし地主が個人のときは、実際に収受していない地代について不動産所得を認定することは困難と考えます。または、社長個人が会社から地代相当額を収受しその同額を会社に贈与したとみなすかどうかでしょう。所得税法ではこのような事例に関する規定はないのですが、相当の地代の収受に関して現実にそぐわない場合には、同族会社の行為計算の否認規定によって、役員(社長)に不動産所得の認定課税が行われることが起こりえます。
         
        137、借地期間満了により更新料を支払ったとき
        【問】
        借地期間満了により更新料を支払ったときの税法の取り扱いについて説明してください。
        【答】
        借地権契約の更新または更新をする場合においても、更新料を収受する取引上の慣行があることが明らかでないときは、その収受をしなくても税務上問題はありません。
        借地法上は、借地期間が満了しても借地権者には更新請求権や建物買取請求権が認められています。このため借地人は地主に対して更新料を支払うことによって借地権の存続期間を更新するのが一般的です。税法上は、この更新料の額を従前の借地権の消滅による新たな借地権の設定とは考えず、更新料の額を借地権の簿価に加算するとともに、従前の借地権の簿価のうち、下記の計算式によって計算した金額を損金算入することにしています。
        
          
            | 借地権の更新直前の簿価 | 
            × | 
            更新料の額
               
             | 
          
          
            | 更新時における当該借地権の価額 | 
          
        
        例えば、更新直前の簿価100万円、更新料200万円、更新時の借地権の時価2,000万円としますと、従前の借地権の簿価のうち損金算入される額は、下記のとおりです。
        
          
            | 100万円 | 
            × | 
            200万円
               
             | 
            = | 
            10万円 | 
          
          
            | 2000万円 | 
          
        
        更新料支払時の仕訳
        
          
            | (借方) | 
            借地権 | 
  
          
             200万円  | 
  
   | 
  (貸方) | 
  現金(当座預金) | 
  
          
             200万円  | 
  
   | 
          
          
             | 
            借地権更新損失 | 
  
          
             10万円  | 
  
   | 
   | 
  借地権 | 
  
          
             10万円  | 
  
   | 
          
        
  
        更新後の借地権の簿価
        100+200−10=290万円
        もし新たな借地権の設定と考える場合は、従前の借地権の簿価は全額損金算入できますが、一方では相当の地代を支払わない場合の借地権の受贈益の認定の問題がありますが、そのような取り扱いはしません。
         
        138、借地上の建物を建てかえるときの承諾料
        【問】
        借地上の建物を建てかえるときの承諾料の取り扱いについて説明して下さい。
          【答】
          承諾料の金額は借地条件の変更時の事情によっていろいろだと考えます。例えば木造建物が古くなり老朽化して滅失するのが近いような場合、建物の滅失によって借地権が消滅しますから、丈夫な建物に建てかえるに際して、新たに借地権を設定する場合の権利金の額に近い承諾料が支払われるはずです。また取り壊す建物が老朽化していなくて今後も寿命が相当あると見込まれる場合には、借地契約期間が満了しても建物の存続する限り借地権者は更新を請求できますので、承諾料の額は低くなるでしょう。その場合の承諾料は、丈夫な建物を所有する場合の借地権の価額と丈夫でない建物を所有する場合の借地権の価額の差額と考えることが可能です。
          木造建物を丈夫な建物に建てかえるに際し新たに借地権を設定する場合に等しい権利金の支払がなくても、借地権相当額の受贈益と言う問題は起こりません。このように借地上の建物を取り壊して例えば、鉄筋コンクリート造りの建物に建てかえるのは借地権内容の重要な変更であって、当然地主の承諾を必要とします。地主としては新しい建物の存続期間中土地の使用が制限されるし、借地権者から建物買取請求権を行使された場合には木造の場合と違い買い取り価額が高くなります。地主の承諾を得るに際し地主の受ける今後の不利益に対する対価として、一般に借地権者から地主に借地条件の変更承諾料が支払われます。
          承諾料を支払ったときは、その性格は借地期間が満了して更新するときに支払う更新料と実質的に同じと考えられるので、(137)、借地期間満了により更新料を支払った場合に説明した方法で、借地権の旧帳簿価額の一部を損金算入することができます。
           
          139、借地権の設定によって地価が著しく低下する場合の土地の帳簿価額の一部損金算入について
        【問】
        借地権の設定によって地価が著しく低下する場合の土地の帳簿価額の一部損金算入について説明してください。
          【答】
          所有する土地に建物の所有を目的とした地上権または賃借権が設定されると、現在では借地権者の権利が非常に強く保護されているために、法人は土地の所有権者であっても土地の利用が制限されてしまいます。法人は底地を所有して地代を得ていくという権利しか残らず、土地の上土部分を譲渡したのに等しくなります。法人が借地権の設定によって他人に土地を使用させた場合、その土地の値下がり額が借地権設定直前の土地の価額の二分の一以上である場合には、土地の帳簿価額のうち下記の算式により計算した金額を損金算入することができます。
          
            
              | 借地権設定直前の土地の帳簿価額 | 
              × | 
              
                 借地権の価額 
                 
                借地権設定直前における土地の価額  | 
               | 
            
          
          仮に会社の土地の時価3000万円、簿価300万円に借地権を設定させて、権利金600万円、敷金1,500万円を受領したとします。尚、借地権割合60%とします。
          300万円×180/300=180万円 180万円が権利金収入の原価として損金算入されます。
           
          140、借地権を設定させた借地人から特別の経済的利益を受けた場合
          【問】
          借地権を設定させた借地人から特別の経済的利益を受けた場合について説明してください。
          【答】
          仮に会社の土地の時価3000万円、簿価300万円に借地権を設定させて、権利金600万円、敷金1500万円(30年、無利息)を受領したします。
          益金算入される上土部分の譲渡の対価は、権利金600万円です。次に敷金の取り扱いですが、敷金は一般的には賃借り人が賃貸借契約によって地主に差し入れる担保で、賃貸借契約満了時に賃借り人に返済されるものです。したがって預かる地主としては負債ですから、益金算入されものとなりません。しかし、地主としては権利金として受け取れば課税されますが、敷金として受け取れば課税されず、その預かる期間が20年や30年と言うように非常に長い期間にわたって、かつ無利息または低い利率の利息であるとした場合、まともに権利金だけを収受した地主の場合との課税の公平が保たれなくなります。そこで税法は、借地権の設定に際し、権利金の収受代えて借地人から通常の場合に比べて特に有利な条件で金銭の貸し付けその他経済的な利益を受けた場合は、下記の算式によって計算した経済的利益を借地権の設定の対価として課税することになっています。
          
            
              | (貸付を受けた金額) | 
              − | 
              (その金額についての通常の利率の5/10に相当する利率の複利現価) | 
            
          
          
          
          ※ 小数点3位まで計算、第4位を切り上げます。
          n: 期間 (1年単位で計算、1年未満の端数は切り捨て)
          r: (年10%−利率が付されている場合の利率)×5/10 
          無利息の場合は、0,05です。
        ※ 経済的利益の計算
          
            
              | 1500万円 | 
              × | 
              1- | 
              
                 1  | 
               | 
            
            
              
                 
               | 
            
            
              | 
                 (1+0,05)  | 
              30 | 
            
            
              | a | 
            
          
        1500×(1-0,232)=1152万円
        この例の場合では、権利金600万円と敷金1152万円の合計1752万円が借地権設定の対価(上土部分の譲渡の対価)です。
         
        141、経済的利益の益金算入(敷金)
        【問】
        敷金の収受おいて生じる経済的利益の額を借地権設定の対価として益金算入する方法について説明してください。
          【答】
          経理実務Q&A、140、借地権を設定させた借地人から特別の経済的利益を受けた場合 の事例により、考察してまいります。
          敷金1500万円にかかる経済的利益は、権利金収受に関する課税の公平のために技術的に計算したもので、経済的利益そのものではありません。本当の意味での経済的利益は無利息で預かった敷金1500万円を今後30年間にわたって会社が運用してゆく過程で生じてくるもので元金が1500万円ですから、30年後の1500万円の複利現価である1500万円×0,232=348万円を元に計算した1152万円より多いはずです。この本当の意味での経済的利益は、今後その発生する事業年度で課税されます。敷金1500万円のうちから1152万円を益金算入するのは、本当の意味での経済的利益を未実現の段階で課税するものではありませんから、将来、敷金1500万円に対する果実が発生してきてもそれと相殺することにはなりません。
          権利金600万円、敷金1500万円受け取ったときの仕訳は、下記のとおりです。
          (借方) 現金、当座預金 2100 (貸方) 権利金収入                                 
          600
                             
                             、(貸方) 預かり敷金 1500
          上記の仕訳をしておいて、その経済的利益の額について申告調整することになります。
          敷金を受け取った事業年度において、申告書別表4の加算の留保欄と別表5の1の当期中の増減の増3の欄および差し引き翌期首現在利益積立金額5の欄のそれぞれ権利金として1152万円を記入し、所得金額の計算上益金算入します。翌期以後の事業年度において敷金に対応する収益が計上されても、それと引き換えに申告減算をして利益積み立て金額から差し引きすることはせず、敷金が負債に計上されている間はそれに対応して利益積立金に残しておきます。
          (借方) 現金、当座預金 2100 (貸方) 権利金収入  600
                             (貸方) 敷金収入   1152
                             (貸方) 預かり敷金  、348
          上記の仕訳をしますと申告調整する必要はありませんが、収入に計上した1152万円分だけ簿外経理になりますから、実務では、好ましい経理処理ではありません。
           
          142、自己株式を所有する会社の同族会社の判定
          【問】
          自己株式を所有する会社の同族会社の判定について説明してください。
          【答】
          同族会社かどうかを判定する場合、税法上は、自己株式についてはその資産性を認めています。ですから、自己株式は、一般的に発行されている株式と同様に取り扱います。自社を株主等に、自己株式の数を発行済み株式総数に含めて同族会社かどうかの判定をします。従って、、自社を一株主として判定した結果、同族会社となる会社は、同族会社に関する法人税法の特別の規定が適用されます。
          先にも述べましたが、自己株式は、税法上、発行する側の立場では、一般の株主に対して発行した株式と変わりなく、株式を取得する側の立場では一般の有価証券と変わりない取り扱いになります。
          尚、同族会社の判定に関しては、経理実務学習の資本金勘定の税務上の取り扱いをご覧下さい。
           
          143、同族会社の判定に際し議決権のない株式、名義株の取り扱い
          【問】
          同族会社の判定に際し議決権のない株式、名義株の取り扱いについて説明してください。
          【答】
          税法上、同族会社に関して特別な規定を設けているのは、少数の株主グループが議決権の50%以上を所有して経営を支配する会社の恣意的な取引を規制するためものと考えます。この規定の設立の趣旨からすれば、その判定は議決権のある株式だけを基礎にして行うべきですが、税法の同族会社の規定をこのように解釈するのは難しく、現行の取り扱いでは議決権のない株式も判定の基礎になる株式に含めることになっています。
          財務諸表規則では、子会社、関連会社の判定を議決権のある株式だけについて行うこととしています。ただし、この規定の適用に関して端株および単位未満株式については議決権を行使できないこととして判定しますが、株式の相互保有によって議決権を制限された株式については、議決権があるものとして判定することとされています。
          商法上の議決権のない株式については下記のとおりです。
          ※ 優先株(利益配当について優先的内容を有する株式)について、議決権なきものとする場合
          ※ 株式相互保有に関して議決権を制限される場合
             発行済株式総数または持分の四分の一を超えてその株式または持分を取得された株式会社または有限会社は、その保有する相手会社または親会社の株式について議決権を有しないこととされています。
          ※ 端株主の場合
          ※ 単位未満株主の場合
          次に、名義株ですが、税法では、同族会社の判定の基礎となる株式は、原則として株主名簿または社員名簿に記載されている株主等によって行いますが、その株主等が単に名義人で実際の権利者がほかにいるときは、その実際の権利者を株主等とします。このことは、収益についての帰属関係を規定した実質所得者課税の原則に配慮している考え方です。
          商法には、名義株についての規定はありません。財務諸表規則には子会社、関連会社の判定に関して議決権を名義人でなく実質所有者で判定するという規定があります。
           
          144、非同族の同族会社の判定について
          【問】
          非同族の同族会社の判定の仕方について説明してください。
          【答】
          税法では、同族会社について特別税率の規定があります。同族会社のうち非同族の同族会社については、その適用はありません。非同族の同族会社とは、同族会社の判定基礎株主のなかに同族会社でない法人がある場合、その法人を判定基礎株主から除外して判定すると同族会社にならない会社をいいます。
          仮に、株主の持株割合の大きい順位として、第一順位、個人40%、第二順位、非同族会社、24%、第三順位、個人15% と仮定した会社とします。
          非同族会社である第二順位の株主グループを除いて同族会社かどうかの判定をして見た場合、第一順位の株主グループと第三順位の株主グループの持株割合の合計が55%ですから、この会社は、同族会社となります。ですからこのケースの会社は、非同族の同族会社ではありません。仮に、第三順位の株主グループの持株割合を9%としますと、第一と第三順位の持株割合は、49%になります。この場合は、判定のために非同族会社でない株主グループでその次の順位のものの持株割合を加算して考慮します。
          非同族会社でない株主グループの上位3つの持株割合の合計が50%以上ならば、非同族の同族会社でなく、同族会社の特別税率の規定の適用を受ける同族会社となります。
           
          145、土地の譲渡がある場合の特別税率
          【問】
          土地の譲渡がある場合の特別税率の適用について説明してください。
          【答】
          会社の当期事業年度の課税所得が土地の譲渡益を含めてもまだ赤字の場合でも、土地の譲渡益に対して特別税率が適用されます。土地の譲渡益に対する特別税率の適用は、一般の法人税とは別に、(1)土地の譲渡益部分について短期所有の場合(所有期間5年以下の場合)は、10%、(2) (1)より長期所有の場合は、5%の税率を適用することになっています。
          各事業年度の所得に対する法人税または清算所得に対する法人税課税は通常どおり計算し、これとは別に土地の譲渡益を計算して特別税率の適用をするものです。従って、当事業年度の課税所得がマイナスであれば一般の法人税の課税は行われません。しかし、土地の譲渡益があれば特別税率の適用が行われます。このことは、法人の所得を土地の譲渡益部分とその他の部分に分けて、土地の譲渡益の部分には特別税率を、その他の部分には一般税率を適用することではなくて、もし、所得を二分しますと、通算すれば赤字なのに、土地の譲渡益の部分には地方税も含めますと70%を超える税率が課されることになりますが、所得を二分しないで特別税率が適用される土地の譲渡益を別に計算しますから、一般の法人税が課税される所得については、土地の譲渡益部分とその他の部分との損益の通算が行われていることになります。
           
          146、欠損金の繰り戻し還付規定
          【問】
          欠損金の繰り戻し還付の規定について説明してください。
          【答】
          会社の所得が欠損になった場合、法人税法には、欠損金の前5年以内の繰越欠損金の損金算入制度と欠損金の繰り戻しによる還付制度とが規定されています。(設備等の廃棄にかかる欠損金については、欠損金繰り戻し還付の規定の適用はありません。)
          この欠損金の繰り戻し還付制度は、会社の欠損金額が生じた場合、欠損金額の生じた事業年度(欠損事業年度)の開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度(還付事業年度)の所得に対する法人税額について、次の計算式によって計算した金額の還付を受けることができる制度のことです。
          
            
              | 欠損金の繰り戻し還付金額 | 
              = | 
              還付所得事業年度の所得税額等控除前法人税額 | 
              × | 
              
                 繰越欠損金額 
                 
                還付所得事業年度の所得金額  | 
            
          
        この制度は、平成4年4月1日から平成14年3月31日までの間の期間に終了する事業年度を欠損事業年度として適用することができない臨時的な停止規定がおかれています。
        ※ 欠損金に係る繰越期間の延長について
        青色申告を提出した事業年度の欠損金は、翌年以後の黒字と相殺することができ、この相殺期間を延長するとを定めたものです。
        繰越控除期間が5年から7年に延長されます。改正に伴って帳簿書類保存期間が一律に7年間となります。
        摘要期間は、平成13年4月1日以後に開始した事業年度において発生した欠損金から摘要になります。
         
        147、利子所得の課税関係
        【問】
        利子所得の課税関係について説明してください。
          【答】
        税法上、利子所得の課税方式は、分離課税と非課税とに区分されます。
        ※ 分離課税となる利子所得 
          (源泉税率は15%で他に地方税5%で、この税率による源泉徴収だけで納税が完了する分離課税ですから、総合課税となりませんので、確定申告できません。)
        公社債の利子
        合同運用信託、公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託の収益の分配
        預貯金(郵便貯金、社内預金、普通預金等の要求払い預金を含みます。)の利子
        ※ 非課税の利子所得(源泉税率は0%)
        年1%を超えない利率の当座預金の利子
        子供銀行の預金利子(非課税の手続きが必要です。)
        税貯蓄組合預金、納税準備預金の利子
        ※ 非課税の利子所得(源泉税率は0%ですが、手続きが必要です。)
        老人等の郵便貯金の利子(元本350万円)
        老人等の小額預金の利子(元本350万円)
        老人等の小額公債の利子(元本350万円)
        勤労者財産形成住宅貯蓄・勤労者財産形成年金貯蓄の利子等(原則として両方の貯蓄を併せて元本550万円)
        (注1)事業主に雇用されている人で55歳未満の人に限ります。)
        (注2)勤労者財産形成年金貯蓄のうち生命保険料等については385万円)
        (注3)下記の利子は、利子所得ではなく雑所得になります。
        学校債、組合債等の利子
        会社等に対する身元保証金に対する利子
        公社債の償還差益または発行差金
        定期積み金等の給付補填金
        金銭貸し付けによる利子は、事業所得または雑所得となります。
        (注4)上記の課税関係は平成12年分の利子所得について掲載しています。
          
           
          
          148、配当所得の課税の特例措置
          
          【問】
          配当所得の課税の特例措置について説明してください。
          
          【答】
          配当所得の課税の特例措置については、配当等と証券投資信託の収益の分配に分けて規定されています。
          ◎ 配当等(証券投資信託の収益の分配を除く。)にかかる課税の特例措置としては、下記のとおりです。
          ※ 確定申告を必要としない配当所得
          (1) 源泉分離課税を選択した株式等にかかる配当等
          法人から配当等の支払を受けた場合で、その配当等のうち、下記のいずれの要件にもあてはまるものについては、納税者の選択によりその支払を受けたときに35%の税率で源泉分離課税の適用を受けることができます。この場合は源泉徴収される税金をもって課税関係が終了ですから、確定申告できません。
          ♯1、1銘柄の所有株式数がその会社の発行済株式総数の5%未満であること
          ♯2、1銘柄当たり1回の配当金額25万円(配当等の計算期間が1年以上のものは50万円)未満であること
          (2) 源泉分離課税を選択する時の手続き
          支払を受ける配当等にかかる最初の事業年度終了の日から15日以内に「配当等にかかる所得の源泉分離課税の選択申告書」を、配当等の支払者に提出します。
          ※ 確定申告をしないことを選択できる小額配当所得
          法人から受ける配当等で、1銘柄につき1回の配当金額が5万円(配当等の計算期間が1年以上のものは、10万円)以下のものおよび特定株式投資信託の収益の分配にかかる配当等で年間支払金額の合計額が10万円以下のものについては、確定申告しないで20%の源泉徴収税額だけで済ませるか、または確定申告をして源泉徴収税額の還付を受けるかの、どちらか有利な方を選択できます。
          ◎ 証券投資信託の収益の分配にかかる課税の特例措置としては、下記のとおりです。
          ※ 確定申告できない配当所得
          証券投資信託(私募証券投資信託および特定株式投資信託を除く。)の収益の分配については、他の所得と区分して15%の税率による源泉徴収だけで課税関係が終了する源泉分離課税です。
          ♯1、源泉徴収に際しては、原則として20%です。(地方税の税率5%が加算されます。)
          ♯2、この源泉分離課税の特例措置の適用を受けた証券投資信託の収益の分配については、総合課税ではありませんから、確定申告できません。
          
          ♪♪ 配当所得の特例措置の適用により確定申告をしない配当所得についての注意点
          ♯1、老年者、寡婦(寡夫)、勤労学生、控除対象配偶者、扶養親族の判定の要件である所得金額には含めません。
          ♯2、配偶者特別控除を受けようとする人の所得金額および控除額を計算する場合の基礎になる配偶者の所得金額に含めません。
          ♯3、雑損控除、医療費控除、寄付金控除の控除限度額の計算の基礎になる所得金額に含めません。
          ♯4、配当控除の計算対象とはなりません。
          ♯5、源泉分離課税を選択した配当所得および源泉分離課税の配当所得について源泉徴収された所得税額は、確定申告によって還付請求できません。
          ♯6、確定申告をしないことを選択できる小額配当について確定申告した場合、♯1〜♯3の所得金額に含まれ、♯4の配当控除の対象になり、その後変更はできません。
          
          ♪確定申告をしなければならない配当所得についての注意点
          ♯1、配当等(無記名のものを除く。)の支払を受ける人は、その支払の確定する日までに、その支払取扱者に対して、氏名、住所等を告知し本人確認のための書類を提示する必要があります。
          ♯2、無記名株式の利益の配当または無記名の証券投資信託の収益の分配につき支払を受ける人は、その支払いを受ける際に、その支払取扱者に受領に関する告知書を提出し、本人確認のための書類を提示する必要があります。
          
           
          
          149、不動産所得となる種目
          
          【問】
          不動産所得となる種目について説明してください。
          
          【答】
          不動産所得となる種目については、(1)不動産の貸し付け、(2)不動産上の権利の貸し付け、(3)その他に区分されます。以下、各種目についての例示と所得の見分け方における考慮事項について掲載します。
          (1) 不動産の貸し付けの種目
          貸家、貸し事務所、貸間、マンション、アパート、貸しガレージ、貸し宅地などが考えられます。
          ※ 不動産所得の見分け方における考慮事項
          ♪不動産の貸し付け所得は、その貸付の業態、規模等からみてかなり手広く経営され、不動産貸付業と同様な程度であっても事業所得でなく、不動産所得となります。
          ♪貸間や下宿等の所得は、通常、不動産所得ですが、賄い付き下宿のような場合は、その経営の程度に応じて事業所得または雑所得となります。
          ♪不動産業者が販売のために取得した不動産を一時的に賃貸しした場合の所得は、不動産売買業の付随的業務から発生したもので、事業所得です。
          ♪貸金業者が代物弁済等で取得した不動産の一時的な貸し付けによる所得は、事業所得です。
          ♪店舗の部分貸付と同様なケース貸しによる所得は、不動産所得です。
          ♪事業主がその従業員に提供している寮や寄宿舎から得る賃貸し料は、一般的に考えますと、福利厚生的な要素があり、実費程度の賃貸し料の場合には、不動産所得の区分計算を省略し事業所得として一括して計算します。
          ♪キャンプ地や海水浴場などにあるバンガロー等、簡易な施設の季節に応じた貸し付けによる所得は、事業所得または雑所得です。
          ♪貸しガレージによる所得は、その貸し付け形態が不動産所得の貸し付けであると認められる場合には不動産所得ですが、時間貸しの有料駐車場のように自己の責任において自動車を保管する場合の所得は事業所得または雑所得です。
          ♪建物に附属する物 建具、畳、または定置された機械装置、船舶の属具など建物と一体的に貸し付け、賃貸し料を収受している場合、その全部の対価が不動産所得です。
          (2) 不動産上の権利の貸し付け等の種目
          地上権、地役権、永小作権、借地権等の設定または貸し付けなどが考えられます。
          ♪借地権、地役権の設定、借地権の転貸しにより一時に収受する権利金や頭金等は、原則として不動産所得ですが、特定の借地権、地役権の設定に基づく権利金および敷金などの預かりから発生する特別の経済的利益は譲渡所得または雑所得となることがあります。
          ♪更新料(借地権などの契約期間満了に伴う存続期間延長として受け取る収益)や借地権の名義が変わるため、地主の承諾を求める対価として支払を受ける名義書替え料は、原則として不動産所得です。名目上更新料であっても契約の重要部分について変更を加えるもの(更改)に当たる場合には新たな借地権設定の対価として、その借地権の設定の対象となった土地の時価の2分の1を超えるときは、譲渡所得です。
          ♪鉱業権、漁業権等は、不動産上の権利ではありませんが、これらの権利の使用権の設定その他他人に使用させることによって得る所得は、事業所得または雑所得です。
          (3) その他の種目
          広告のために、土地、建物の屋上や側面等に、ネオンサインや広告塔、広告看板を取り付けさせることにより得る収益(使用料)は不動産所得です。
          
           
          
          150、建物の貸し付けが事業として行われているかどうかの判断
          
          【問】
          建物の貸付が事業として行われているかどうかの判断について説明してください。
          
          【答】
          建物の貸付が事業として行われているかどうかの判断については、下記に記載する規模によって判断します。そして@またはAのいずれか一つにあてはまるときは、事業として行われていると判断します。
          @貸間、アパート(棟割長屋を含む。)については、貸与することができる独立した部屋数(室数)が概ね10以上であること
          A独立した家屋(@のものは除く。)の貸し付けについては、概ね5棟以上であること
          また、賃貸料収入の状況、貸し付け資産の管理の状況などからみて、@、A野場合に準ずる事情があると認められる場合には、原則として、事業として行われていると判断します。
          建物の貸付が事業として行われている程度の規模で経営されている場合に限り、生計を一つにする配偶者やその他の親族がアパート管理などの職務に専従している場合には、青色申告者の場合は、青色事業専従者給与を支給することができます。白色申告者の場合は、白色事業専従者控除額を差し引くことができます。
          (注) 青色専従者給与の額は、その仕事の内容や従事の程度、他の使用人の給与の額などからみて、相当と認められる適正な金額として、所轄税務署に届け出た金額の範囲で支給することができます。
          詳細については、経理実務Q&A 25、青色事業専従者給与と白色事業専従者控除との違いを参照してください。
          
           
          
          151、特定優良賃貸し住宅の割増償却
          
          【問】
          この制度は、不動産所得の計算上必要経費となる減価償却費の計算において通常の減価償却費の額に代えて割増償却を適用する制度です。
          特定優良賃貸し住宅の供給の促進に関する法律に規定する特定優良賃貸し住宅のうち特にその建設の促進を図る必要があるものとして共同住宅または長屋に移る各独立部分で上記の同法の認定計画に基づく建築に係るものの数が10以上である場合のその各独立部分(共同住宅の共用部分を含む。)が割増償却の対象となります。
          (注1)長屋に移る各独立部分とは、構造上区分された数個の部分の各部分をいいます。
          (注2)上記の同法の認定計画に基づく建築にかかるものとは、下記の要件のいずれも満たすもののことです。
          ♯1、各独立部分にかかる共同住宅または長屋の建設費について同法による地方公共団体の補助を受けていること
          ♯2、各戸が床面積(共用部分の床面積を除く。)が50u以上125u以下であること
          
          減価償却費の割増率
          平成14年3月31日までに新築された優良賃貸し住宅を取得しまたは優良賃貸し住宅を新築して、これを賃貸しの用に供した場合に、その賃貸しの用に供した日以後5年以内でその用に供している限り、その優良賃貸し住宅の減価償却費の計算上、割増償却が認められます。
          
          
            
              | 
                 取得等した時期  | 
              
                 割増率  | 
            
            
              | 
                 耐用年数45年以上の家屋  | 
              
                 耐用年数35年以上の家屋  | 
              
                 その他  | 
            
            
              | 平成7年4月1日〜平成8年3月31日 | 
              
                 170/100  | 
              
                 a  | 
              
                 150/100  | 
            
            
              | 平成8年4月1日〜平成10年3月31日 | 
              
                 165/100  | 
              
                 a  | 
              
                 147/100  | 
            
            
              | 平成10年4月1日〜平成12年3月31日 | 
              a | 
              
                 155/100  | 
              
                 140/100  | 
            
            
              | 平成12年4月1日〜平成14年3月31日 | 
              a | 
              
                 144/100  | 
              
                 132/100  | 
            
          
          (注)       
          譲渡所得の計算の特例(租税特別措置法33、33の2@A、33の3A、37、37の5、37の9の2)の適用を受けた買い換え資産や代替資産などの家屋については、割増償却の適用はありません。    
          
    
               
          
    
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